ふじみクリニック

いよいよ師走です(1)

2025.11.30

寒くなってきました。

通勤途上、狭山-所沢-清瀬とほぼ一直線に通り抜ける県道バイパスの半ば、所沢市郊外の中富から下富のあたりの道路東側には広大な露地畑が広がっています。ところどころに葱や白菜など少数の冬野菜が植え残されていますが、多くは収穫が終わり、畑たちも冬眠の季節に入ったようです。晴れた日の早朝、出かける前の天気予報で5℃を下回るくらいになると、天地を遮るものの何もないその場所では、黒土の畝が見晴らせる限り真っ白になっています。車から降りて畑の土をザクザクと踏み、霜柱のでき具合を確かめたい誘惑に駆られますが、夜明け間もない時刻でも道路は混んでいます。時が来れば静かな眠りに入るこの畑たちと違って、人間とは何と慌ただしくせわしい生きものなのでしょう。

窓を開けて朝の冷気と凍った土のにおいを確かめるだけにして仕事場へと急ぎます。

さて、このところご無沙汰だった二人の老人の姿を街角で見かけました。久しぶりにその話に耳を傾けてみましょう。

白髪老人
(以下「白」)
やあ、つるさん。元気だったかい。この前会って話したのはいつだっけ。5月か6月か・・・
つるりん老人
(以下「つる」)
ほんとに。なんか、自己愛とかパーソナリティ障害とか、ADさんやAPさんに解説してもらったっけね。
それにしても朝夕寒くなったねえ。
つる ほんとうに。
なんだかさ、どのくらい前からか覚えていないけど、「地球温暖化」とか「SDG’s」とか盛んに言われ始めて、夏がすごく暑くて長くなってから、余計に冬の寒さが身に応えるみたいなんだよね。
つる おれもそうだよ。でもお天気博士みたいな近所の友達に聞くと、冬も確実に温暖化しているんだってさ。
へえ、そうなんだ。でもさ、だんだん朝起きづらくなってきてるよなあ。
つる 年齢とともにこっちの耐久力が弱くなっているんだろうね。
こんなことはADさんとかAPさんとかの知恵者でも、専門外なんだろうね。
AD お呼びになりましたか。
あれれ、まだ呼んではいないけど、ADさんは毎度俊足だねえ。
せっかく飛んできてくれたんだから、さっき話してた「冬の温暖化」について、何かご存じのことあるかい?
AD 専門外のことでもあれこれ調べるのは嫌いではないので、ちょっと見てみましょう。
見てみるって・・・
つる ADさんもAI使うのかな。
冬の温暖化(冬の平均気温の推移)
AD はい、だいたいわかりました。

つるさんのお友達の仰る通り、「冬の温暖化」も認められます。気象庁の長期データによると、日本の冬の平均気温は上昇傾向にあり、「春や秋が短くなった(四季ではなく二季化している)」という体感も、生物季節観測(桜や紅葉のデータ)などの客観的な数字によって裏付けられつつあります。
気象庁の統計(1898年冬〜2024年冬)によると、日本の冬(前年12月〜2月)の平均気温は、変動を繰り返しながらも100年あたり約1.24℃の割合で上昇しています。この傾向は-
  • 世界平均よりも早いペース
    世界の冬の気温上昇率(100年あたり約0.83℃)と比較しても、日本の上昇ペースは早く、温暖化の影響を強く受けていると言えます。
  • 「冬日」の減少
    最低気温が0℃未満になる「冬日」の年間日数は、ここ数十年で明確に減少傾向にあります。昔に比べて「底冷えする朝が減った」と感じるのは、データ上も事実です。
つる てえことは、秋や春という季節は・・・
短くなっているという実感は当たってるのか。
「春と秋の短縮化」の正体
AD そういうことですね。

「春と秋が短くなった」と感じる最大の要因は、夏の期間が前後に「膨張」しているためだということです。これにより、春と秋という快適な「中間季節」が圧迫されているわけです。 これを植物のデータ(生物季節観測)で見ると非常に明確です。
  • 春の訪れが早まる(桜の開花)
    サクラ(ソメイヨシノ)の開花日は、10年あたり約1.2日のペースで早まっています。春が来るのが早くなり、その分、初夏の暑さが訪れるのも早まっています。
  • 秋の訪れが遅くなる(紅葉の見頃)
    カエデ(もみじ)の紅葉日は、10年あたり約3.0日のペースで遅くなっています。9月、10月になっても残暑が続き、本格的な秋の到来が後ろ倒しになっているということです。

概ね以下の表のようです。

季節 現象 変化の傾向 結果(体感)
桜の開花 早期傾向 寒い冬から急に暖かくなり、すぐに暑くなる
紅葉 遅延傾向 10月過ぎまで暑さが残り、急に冬へ突入する

つまり、「夏が長引く」ことと「冬の極端な寒さが減る」ことによって、その間にある春と秋の存在感が薄れ、「あっという間に夏、気づいたら冬」という感覚(いわゆる二季化)を生んでいるのです。

つる なるほどね。言われてみれば今年も11月最後の週は「小春日和」が多かったかも。日中20℃超える日もあったしね。
でもね、暖冬だっていうのに、とくに日本海側の地域で、冬場の交通マヒや災害を生む「ドカ雪」っていう現象がどうして起こるんだろう?
温暖化なのに、どうして「ドカ雪」?
AD 「温暖化しているのに、なぜ大雪が降るのか?」という疑問の声もよく聞かれますね。これは、以下のようなメカニズムが働いているためです。 環境省や気象庁の予測では、今世紀末にはさらに気温が上昇し、以下のような冬の変化が予測されています。
  • 海水温の上昇
    日本近海の海水温が上がると、空気中に含まれる水蒸気量が増加します。
  • 寒気の流入
    温暖化が進んでも、冬には大陸から一時的に強い寒気が流れ込むことがあります。
  • 結果
    「豊富な水蒸気」と「強い寒気」がぶつかることで、気温は昔ほど低くなくても、降雪量が極端に増える(ドカ雪)という現象が起きます。
    *昔:寒くて雪が降る(回数が多い)
    *今:普段は暖かいが、降る時は極端に降る(気温差や降水量の増減幅が大きい)
環境省や気象庁の予測では、今世紀末にはさらに気温が上昇し、以下のような冬の変化が予測されています。
  • 本州の太平洋側や日本海側の平地では、積雪の機会がさらに減少する。
  • 一方で、北海道や本州の内陸山間部では、ドカ雪のリスクが継続、あるいは強まる可能性がある。