2022.02.07
毎日の睡眠が私たちの健康維持に重要であるということは誰でも知っていることです。知ってはいますが、実際に私たちは十分な睡眠を確保できないことがしばしばあります。仕事、趣味(遊び)、家事、育児-個人によってその理由は様々ですが、早く寝たいと思っても、明日に持ち越すわけにはいかない用事を片づけただけだというのに、時計は12時を回っている・・・
ヘルスケア用品を手掛けるフランスの企業ウィジングズ(Withings)による日本を含めた14カ国の睡眠データによると、2020年に調査対象とした14か国(日、中、伊、英、米、仏、独、スイス、スペイン、オーストリア、カナダ、スウェーデン、オランダ、ベルギー)のうち、日本はもっとも短く、6時間22分19秒ということでした。この調査は、同社の睡眠状態計測機器を購入したユーザーからの情報提供によるものなので、各国国民全員の平均値を表していると断定することはできません。しかしそのような機器を購入するような人は平均以上に健康や睡眠に関心がある人でしょうから、「自分の睡眠についてそれなりに配慮している人でも、世界平均(7時間8分)と比較して、日本人は短眠傾向である」と言ってもよいでしょう。
睡眠障害は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のみならず、認知症、うつ病、前立腺癌や乳癌といった悪性腫瘍など、さまざまな疾患の発症に関連しています。数多くの研究から、睡眠障害と疾患の発症リスクの間の因果関係が実証されているものも少なくありません。とくに、睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群:Sleep Apnea Syndrome)、不眠症(Insomnia)、短時間睡眠(Short Sleep)に関する研究は多数あり、種々の生活習慣病や心血管障害との関連性が報告されています。米国心臓学会による最近のメタ解析論文*を参照すると、生活習慣病との関連性は次のようです。
不眠症 | 睡眠時無呼吸症候群 | 短時間睡眠** | |
---|---|---|---|
心血管疾患や突然死 | + | + | - |
脳梗塞や脳出血 | ? | + | + |
冠動脈疾患 (狭心症や心筋梗塞) |
? | + | + |
高血圧 | ? | + | + |
糖尿病 | + | + | + |
+ 関連あり - 関連なし ? メタ解析***なし
* St-Onge MP, Grandner MA, Brown D, Conroy MB, et al.: Sleep Duration and Quality: Impact on Lifestyle Behaviors and Cardiometabolic Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2016;134:e367-e386.
** 個人によって最適睡眠時間は異なるので、短時間睡眠イコール睡眠不足とは断定できない。しかし生理的な短時間睡眠者はごく少ないので、「私は少しの睡眠時間でも平気」と言っている人の多くは睡眠不足に陥っている可能性が高いと言われています。
***メタ解析とは、方法論や対象集団に関して信頼できる複数の研究結果を統合し、より実態に近い知見を探索する方法。