2023.8.22
[2023/8/5 花火大会]
新型コロナ(Covid-Ⅱ)感染症が5類に格下げされて4か月。この夏は久方ぶりに各地の夏祭りや花火大会が再開され,多くの観客を集めました。テレビ中継もあった有名な花火大会の人出を見ると,隅田川花火大会(7/29)では約95万人,長岡まつり大花火大会(8/2~3)では約28万人,神宮外苑花火大会(8/12)ではなんと約100万人が現地を訪れたということです。筆者の地元の入間川七夕まつりでは例年30分ほどのささやかな打ち上げ花火が行われていましたが,4年ぶりに再開された今年は,コロナ前の2019年と比べると大分豪勢な構成で華やかな大玉小玉が連発され,見応えがありました。
先回の本コラムでは,個人的な夏の記憶を述べましたが,大人になってからの「夏休み」の思い出というものは意外に希薄なものです。若い頃は盆暮れといっても長い連休などめったに取れませんでした。そもそも日本の一般的なサラリーマンにとって夏休み,盆休みというものはどんな内容であり,位置づけなのでしょうか。そんなことを思いめぐらしていたら,またまた例の二人組の会話が聴こえてきました。
白髪老人 (以下「白」) |
言っちゃあなんだが,毎日この暑さはたまらんね。 |
つるりん老人 (以下「つる」) |
いったいいつまで続くんだか。 |
白 | まあ今年の夏はコロナで休止されていたあちこちの祭りや花火大会が再開されて,暑さにもかかわらず街の人通りも戻ってきたようだけど。 |
つる | 外国の旅行客もずいぶん押し寄せてるっていうからね。 |
白 | まあいいことなんだろうけど,テレビで外人さんのインタビュー番組なんか見てると,結構長い休み取って来てるみたいだね。 |
つる | 夏休みかあ。おれたちはもう毎日日曜みたいなもんだから,ぴんと来なくなっちゃったけど,盆休みとか正月休みとか,白さん現役時代はちゃんと取っていたかい? |
白 | う~ん,もう半世紀前のことだしなあ。当時はやたら忙しかったから2,3日休めればいい方だったかな。「夏季特別休暇」なんか,聞いたこともなかったし。 |
つる | そうだよな,墓参りして子どもを海か山に連れて行ってやれば上出来ってもんだったな。 |
白 | そういえば「バカンス」なんて言葉が歌の文句に出てきたの,いつごろだっけね。 |
つる | そんなのあったよな。ちょっと待って。 |
白 | おっ,スマホチェックだね。 |
つる | う~んと・・・見つけたよ,「恋のバカンス」。双子のザ・ピーナッツ。1963年だって。 |
白 | ザ・ピーナッツ!いたいた,♪♪ためーいきの出るーよな・・・♪♪ |
つる | もう60年前になるんだ。さすがのおれたちも働き始める前だね。 |
白 | バカンスねえ。英語ならバケーションか。 |
つる | そういえば,娘は会社の総務課にいるらしいんだが,こないだ会った時,「働き方改革」委員とかで,夜中まで会議やってちゃ本末転倒だってブーブー言ってたっけ。 |
白 | はは,確かにね。コロナで在宅勤務が普及して,結構自分の生活に合わせた仕事時間に替えやすくなったって聞いたことがあるけど,最近はまたふつうに混んだ電車乗って出社中心の会社が多いんだってね。 |
つる | 娘が調べたところでは,日本という国は,年間祝日数は比較的多いらしいが,年次有給休暇の取得率は相変わらず低くて,しかも長い休暇はやっぱり取りにくいんだって。 |
白 | そういえばバカンスの本家フランスでは,会社は社員に一定日数休ませなきゃいけないっていう法律があるらしいね。ほら,つるさん,得意のスマホで調べてみて。 |
つる | ああ,ちょっと待って。 |
白 | 日本も最近はやたらに「働き方改革」とか「ライフ・ワークバランス」とか言うけど,今の政府はここ数十年非正規労働者を増やし続けてきたし,所得水準は下がってお隣の韓国や台湾にも負けちゃうし,銀行の利子はつかないし,それなのに物価はぐんぐん上がるし,トヨタみたいな大企業が営業利益1兆とか2兆だとか言われても,おれたち庶民や中小企業はなあ。大企業の株価が上がってるって言うけど,株で不労所得得られる人なんて,相当ゆとりのある人だけじゃないか。 |
つる | おお,あったよ。フランスの「バカンス法」だって。そのまんまの名称だ。「すべての労働者に年間5週間の有給休暇期間が付与され,取得させなければならないことになっている。違反した企業への罰則も設けられているので,単なる奨励ではなく休暇を取ることが権利・義務となっている」んだって。 |
白 | おれも今見たら,別のサイトでこんなことも書いてある。 「休暇取得権利(企業側は義務)は,フランスだけでなく,ドイツでもドイツ連邦休暇法によって,年間最低24労働日の有給休暇を取るよう定められています。事情はイギリスも同じで,休暇に関する法律で年間最長28日の有給休暇を取ることができます」だってさ。 |
つる | この国じゃあ,風邪で受診するのも有給休暇使わされるもんなあ。 |
白 | こっちにはないのかい。何か働く人のための休暇法みたいなのは。 |
つる | 待って・・・法律がないわけじゃあないらしい。 |
白 | 有給休暇の5日取得義務化ってのがあるらしい。 「10日以上有給休暇を付与される従業員が自社に在籍する場合,対象従業員に対し5日以上の有給休暇消化を義務付けた制度。働き方改革の一環として,2019年4月から施行されている。対象者は正社員だけでなく契約社員・パート・アルバイトなど,有期雇用契約者も含まれている。有給休暇の消化期限は,有給休暇を付与した日から1年以内。有給休暇を5日以上取得させなかった企業は法律違反に該当し,罰則が科せらる。」 日本も遅まきながら休暇を取りやすくさせているってことか。 しかし10日の5日って,50%取らせればいいのかよ。 |
つる | 年間10日以上の有給付与って,どんな場合なんだろ。 |
白 | それも書いてある。労働基準法第39条だって。表が載っている。 |
つる | こんなの,おれ,正直,知らなかったわ。 |
白 | でも同じHPに2021年の日本の有給取得率はようやく60%で,上位3か国のタイ・台湾・カナダと比べて30%以上低いらしい。 |
つる | おれたちは,とにかく一所懸命働いて,今日できることは明日に持ち越さないように,たくさん働けば働くほどえらいって思ってたよな。ん?思い込まされたのかな? |
白 | いや,やっぱりきちんと,全力出して働こうという姿勢は大事だよ。そういう姿勢がいけないんじゃなくて,全力出しても燃え尽きないで,明日につなげられる体力や気力を養うためにこそ,十分な休みが必要だってことじゃないか。 働きづめで,思考力が鈍って,わけわからなくなってビルの屋上から飛び降りちゃう人が出てくるような会社の勤務実態を調べれば,普通じゃない状況がしばしば明らかになっているじゃないか。 休みなしの仕事ぶりでは,事故が起きやすくなることも,アイデアが湧かなくなることも,えらい学者さんがあちこちで繰り返し指摘している。例の中古車取扱会社のひどい事件も似たようなケースだ。 |
つる | 生きていくために仕事するのは必要だけど,仕事だけが人生の目的じゃないしな。仕事のために死んでしまったら元も子もない。 |
白 | その通りだ。生きることの,幸せになることの方法として仕事があるんだよな。その人の健康/生命とか幸せってもんを壊すような仕事は仕事じゃないよ。 もちろん,何にせよ「いい仕事をした」っていう達成感が人を幸せにするということもあるけどね。 |
つる | 幸せか・・・確かに。しかしね,長い休みもらっても,することなくて奥さんに煙たがられるようになるのも悲しいけど。 |
白 | 定年後の「濡れ落ち葉」みたいにか。 |
つる | やっぱ,現役の時から休みはきっちり取って,仕事以外の愉しい活動の一つや二つは開拓しておくべきなんだろうね。 |
白 | たしかにそうだけど,普通の人間だったら,やっぱり一人きりじゃなかなか見つけられないかもね。 |
つる | 白さんが身近にいて,おれはホントに助かってるよ。 |
白 | 何言ってるんだよ。お互い様ってことだよ。あとは新しいことを実行するのに面倒くさがらないことかな。面倒くさがりのおれが言うのは矛盾してるけど。 |
つる | なんか・・・いろいろ考えてると,なんかめんどくさいな,生きるってのは。よく生きるってのはどんな生き方だろう。 |
白 | あれこれめんどくさいことは多いけど,「よい生き方」っていうのも一概に言えないけど,それでも「生きててよかった」って思えることがたまにはある。 |
つる | そうだね。たまにはね。 休みの時は「何かのため」ではなくて,いちんちぼーっとして休むことそのものを味わえたらいいのかも。 |
白 | うん。ぼーっと海見たり,空の雲見たり。 |
つる | 広いところがいいなあ。 |
白 | 見晴らしのいいところがいいなあ。 |
つる | 横にビールがあればもっといいなあ。 |
白 | ビール飲みながら波の音と「恋のバカンス」聞いて,日がな海眺めてるってのは,ホントにいいなあ。 |