ふじみクリニック

閑話休題

2024.07.02


[2024.6月 狭山市]

6月終盤から雨の季節に入りましたが,気温は高いままで,なんとも蒸し暑く,過ごしにくい日々となっています。梅雨の長雨の時期は,日照不足による気分の停滞や蒸し暑さのために睡眠不足が生じやすく,気圧依存性の頭痛症も悪化しがちです。また,食中毒の好発時期でもあります。この時節には気温のみに注目するのではなく,高湿度環境が発汗による体温調節をむずかしくするので,とくに高齢者では気温,湿度とその日その日の自身の体調についても自覚しておく必要があります。換気や除湿,過剰な節電意識を控えてエアコンをつける,扇風機を回すなどして,汗を上手に蒸発させるようにしましょう。

そんな中でも「梅雨の中休み」と言える日も時々訪れます。

今朝目ざめたら,窓から明るい陽射しが注ぎ込み,庭のヤマボウシの枝葉越しに久しぶりの青空を臨むことができました。

顔を洗って外に出てみると,起き抜けに出会った明るい空にはもう,うっすらと刷毛で掃いたような雲がかかっています。数日続いた雨で地面はしっかりと水を含んでいるので,狭い庭のあちこちでゆらゆらと陽炎が立ち昇っています。ほんの1週間ほどの間に,手入れもしていない芝が10cmほども伸び,どこから種子が運ばれてきたのかわからないまま棲みついたドクダミが植え込みの隙間をびっしりと埋め尽くしています。

梅雨の季節と言えば,以前はしとしと降り続く長雨の中,うす暗くても静かな日々を思い浮かべたものですが,最近では,すっかりなじみの言葉になった「線状降水帯」に代表されるような大きな被害をもたらす豪雨から,夏の深刻な水不足をきたす「から梅雨」まで,読書や沈思黙考に適した風情のある季節ではなくなってしまいました。

どんな天気であろうと,日は巡り,日々の仕事は続きます。テレビやネットを通じて入ってくるニュースは,先の見えぬ混沌とした世界のありようを伝え,耳目を塞ぎたくなることばかりです。しかし,あの大きな戦争から80年,私たちの国が,子どもたちが再びの惨禍にまみれないためには,たぶん,私たちの国のことだけ考えていればよいというわけにはいかないのでしょう。

けれども,私たちが世界のことを考えるといっても,この小さい私たち一人ひとりにいったいどんなことができるというのでしょう。それでも,毎日歩く道に転がっている,お年寄りならば躓いてしまうかもしれない石くれを除けて歩きやすくすること,今日出会ったその人のために私にできることは何かないだろうかと一生懸命考えること,そんな日常的なふるまいもまた無意味ではないと信じたいのです。